老人ホームで歌を歌うことにはどのような理由があるのか

老人ホームのレクリエーションでは、さまざまな取り組みが行われています。歌もそんな取り組みのひとつです。なぜ老人ホームの中には音楽に力を入れている施設があるのか、なぜ歌を取り入れるのか。老人ホームでの歌の取り入れ方も合わせて紹介します。


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老人ホームで歌を歌う理由

老人ホームで歌を取り入れているのには訳があります。

音楽療法として用いられる

歌を歌うと、「楽しい」「うれしい」「すがすがしい」など、さまざまなプラスの感情が沸き上がることでしょう。音楽には、こうした人の心に作用する力のほか、生理的、社会的、あるいは認知的な状態に作用する力があるといわれています。

こうした音楽の力を使って、心身の向上を図ろうとするのが音楽療法です。音楽療法は、心身の障害の有無や年齢を問わず、幅広く取り入られることができます。老人ホームでの生活の向上に働きかける意味で、音楽療法のひとつである「歌」が取り入れられているのです。

老人ホームにおける役割

歌を歌うことは、音楽療法のひとつとお話ししました。それではなぜ、老人ホームで取り入れられることが多いのでしょう。高齢者が歌を歌うことには、以下のようなメリットが期待されています。

気持ちを安定させる
感情表現が苦手な方でも、歌を歌うと表情がやわらかくなり、笑顔になることがあります。音楽が人をリラックスさせるためです。沈んだ気持ち、イライラした気持ちも和らぎ、自分の感情もコントロールしやすくなります。新しい暮らしに慣れるまでの不安、日常のちょっとしたストレスを解消してくれる効果も期待できるのが音楽です。

身体機能への働きかけ
大きな声を出して歌うと、同時に大きく呼吸していることが分かります。これは、心肺をしっかり使っているためです。歌を歌うことは、年を重ねることで落ちていく心肺機能の維持や向上にも役立ちます。同時にからだを動かす動きを取り入れれば、そのほかの身体機能にも働きかけることが可能です。

認知症の予防
歌詞を見て声に出す、耳で聞いて声に出す、リズムに乗るなど、歌は脳にとって大きな刺激です。脳が活性化することによって、認知症の予防が期待できます

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老人ホームで歌はどのように用いられる?

老人ホームでは実際、どのような歌が、どのようにして用いられているのでしょうか。

よく歌われる歌とは?

老人ホームで主に歌われるのは、童謡、演歌、歌謡曲。高齢の方なら一度は聞いたことがあったり、口ずさんだりしたことがあるような曲が多いです。

これは、音楽療法でいう「回想法」による効果を期待してのこと。回想法は、1990年代から薬物を使わない治療法として、認知症患者を中心に用いられるようになりました。

認知症の方は特に、直近のことを覚えていなくても、昔のことは記憶していることが多いといいます。同じように、認知症でなくても、昔のことを懐かしむ方は高齢者に多いです。

昔を思い起こす回想は、年を取るとみられる自然的なこととアメリカの医学士は言っています。

自然に人が回想しようとするのは、過去のできごとの解決を図ったり、現在に活かしたりしたいとする心理が働くため。高齢者の傾向である「回想」を否定せずに、回想を支援して日常生活に役立てようとするのが回想法です。

昔のことを、目や耳など五感を使って思い出し、脳を活性化させることによって、認知症の進行を和らげたり、孤独や不安を和らげたりする効果が期待できます。

童謡、演歌、歌謡曲、いずれも高齢者が幼い頃、若い頃を思い出すのにぴったりであることから、老人ホームでは良く取り入れられているのです。

どのように用いられる?

手拍子を取りながらアカペラで歌うこともあれば、カラオケを利用したり、ピアノ演奏に合わせて歌ったり、取り入れられ方は施設によってさまざまです。

からだを動かすことによる効果を期待して、歌に合わせてからだを動かしたり、楽器を演奏したりすることもあります。

1対1で行っているところ、集団で取り入れているところ、やり方もさまざまです。自信を取り戻すなど個人への効果が期待できるだけでなく、周りと歌を通して関わり合いを持つことによって、豊かな対人関係を育み、新たな役割を築くことにも役立っています。

施設によって頻度や内容は変わってきますので、重視したい場合は大まかな内容だけでも確認しておくと安心です。

歌に合わせたゲームの具体例

施設によっては、歌の効果を活用しつつ、ゲーム性を高めたレクリエーションが行われていることもあります。ゲームの例をいくつか見ていきましょう。

・イントロクイズ
通常のイントロクイズ同様に、CDなどを利用して曲の冒頭部分だけを流し、タイトルを当ててもらうゲームです。老人ホームでは、誰もが知っているような曲、高齢者世代になじみのある曲が使われます。イントロクイズでは曲を思い出す作業が必要ですし、瞬時に思い出す力も必要です。脳の活性化が期待できます。

・童謡カルタ
童謡の最後の一節が書かれた大きめのカルタの札を用意して、CDなどで曲を流し、該当するカルタを取っていくゲームです。カルタを取るには、その曲を知っているだけでなく、どのような歌詞かも知っておかなければなりません。

曲の最後がカルタになっていることで、曲の流れを頭でイメージする作業、想像力が必要となり、脳が活性化されます。

・歌ってボール回し
円状にイスを用意して座り、複数の形の違うボールを使って行うゲームです。なじみの曲を用意し、歌を歌いながら、リズムに合わせてボールをとなりの人に渡していきます。ふたつのことを同時に行うため、脳を活性化するのに効果的です。

このゲームで複数の違う形のボールを使う理由は、さまざまな重さや形のものを掴むことでバランス感覚を磨けるようにするため。単純な動作のように思えますが、ボールの種類を増やすことで、からだの機能向上や維持にも役立てることができます。

いずれの方法も、ゲーム性を持たせることによって、参加者の興味関心を惹き、楽しみながら心身の機能維持や向上が図れることが特徴です。

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ロングライフでは多彩なイベントを開催

入居者様が質の高いセカンドライフをお過ごしいただけるよう、全国に有料老人ホームやグループホームを展開しているロングライフでは、音楽を含めた多彩なイベントを開催しています。

ホームによって開催されるイベントの内容は異なりますが、過去にはオペラ鑑賞やコンサートも開催しました。

音楽は心を安定させるリラックス効果が期待できると紹介しましたが、美しい音色を耳にすることで、心の活性化も図れるのではないでしょうか。感動や喜びなど、普段とは一味違う胸の高まりを体感できるはずです。

ロングライフではこのように、ホームでの日々の暮らしに彩を感じられるよう、豊富なイベントを開催するなど、入居者様のセカンドライフを支援しています。一度、ホームでの暮らしを体験されてみてはいかがでしょう。見学のご相談、ご予約もお気軽にお問合せください。

まとめ

老人ホームでは、童謡や歌謡曲など、入居者になじみの深い歌を歌ったり、歌を使ってさまざまな活動やゲームを行ったりすることがあります。いずれも、からだや心の機能向上や維持が期待できる活動です。認知症や心の安定にも良いといわれています。

ホームによって取り入れられ方は異なりますので、どのような内容が実施されているのか、実際に体験されてみるのがおすすめです。開催される頻度もホームによって異なりますので、音楽を重視されたい場合は合わせて確認しておくと良いでしょう。

※こちらの記事は、2019年12月24時点の情報をもとにした記事です。

No.1912-06