【ロングライフ国際学会】グローバル入浴 〜感動のサービスにゴールはない〜

2021年11月8日に、世界的に深刻化する超高齢社会の課題を考える機会として『第17回ロングライフ国際学会』が開催されました。今回は、ロングライフ国際学会で発表された、エルケア株式会社「エルケア船橋入浴センター」の事例をご紹介します。 発表者はエルケア船橋訪問入浴センターの山田耕平さんです。


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訪問入浴サービスとは?

現在日本は高齢化が加速しており、介護ホームの利用者も右肩上がりに増加しています。訪問入浴は特に介護度4〜5の重度のお客様を対象としたサービスで、高齢者だけでなくALSなどの疾病による重度障害の方へのケアも行っています。
エルケア株式会社は、訪問介護を中心とした8つのサービスを提供しています。ロングライフでは1986年に訪問入浴事業を開始し、人生の最後まで自宅でお風呂に入りたいというお客様の思いを大切に、30年以上にわたり訪問入浴サービスの提供を行っています。
訪問入浴とは、お客様のご自宅に看護師、オペレーター、ライフコーディネーターの3人1組で訪問し、専用の浴槽を設置して行うサービスです。
入浴は清潔のためだけではなく、癒し効果、血行の促進、リフレッシュなど、健康な生活のためになくてはならないものです。
しかし介助が困難であったり、設備がないなどの理由から入浴を諦めてしまう方がたくさんいます。お客様の中にはサービス開始まで何年も入浴していなかった方も珍しくありません。
お風呂に浸かった途端、喜びで泣き出される方や、手を合わせて拝みながら喜んでくださる方もいらっしゃいます。訪問入浴とはこんなやりがいや喜びのあるサービスです。
またこの数年間は、お客様もスタッフも外国籍の方が増加傾向であり、日々業務のグローバル化を推進しています。
今回の事例は、そんなグローバル化を顕著にあらわしたものです。

アメリカ出身の大柄なお客様の場合

アメリカ・テキサス州出身の80歳の男性。仮名としてビクター様とお呼びします。
ビクター様は、身長は約2m、体重は90キロ以上と体格の良い方で、左視床下部出血後、右麻痺、肺炎と心不全発症の他、ADLが低下され、寝たきりとなられました。ご本人様がベッドから動くこと、外に出ることに不安を感じており、デイサービスなどを利用することができず、数年間自宅での入浴ができていませんでした。
奥様が一人で体の清潔保持などの介護を行っていたため、訪問入浴のご依頼をいただきましたが、サービス開始時は他社の訪問入浴も利用されていました。
奥様は日本の方ですが、ご本人様は英語でしかコミュニケーションを取れない方です。自宅は英会話教室を経営されており、以前はビクター様も講師として働いていました。

4つの課題と3つの仮説

自宅での入浴を行うにあたっての課題は大きく分けて4つありました。
1、日本語でのコミュニケーションが難しい
2、身体が浴槽に入りきらない
3、ご本人様はベッドから動くことに対して不安を感じられている
4、ビクター様を一人で介護されている奥様の介護軽減

仮説としては次の3つが挙げられました。
1、スタッフが英語で会話ができるようになればコミュニケーションが図れ、不安が軽減できるのではないか
2、設備を工夫することで身体が大きな方でも安心して入浴できる方法があるのではないか
3、訪問入浴が定着することで、奥様の介護負担が軽減できるのではないか

私たちは仮説をもとにカンファレンスを開催し、ビクター様に安心・安全に入浴サービスを提供し、奥様に対しては身体を拭くなどの介護負担を減らすことを目標に取り組むようにしました。

英語でのコミュケーションにチャレンジ

まずコミュニケーションについては、英会話スマホアプリの導入や、スタッフが作成した英会話帳を活用し、ジェスチャーを用いて英語での会話を試み、ご本人の安心のために、入浴中は奥様にそばに付いていただき会話をサポートしていただきました。
身体が浴槽に入りきらない課題に対しては、頭部ベルトを使用。浴槽から出てしまう足にはバスタオルをかけ寒くないよう足部のマッサージを行いながら入浴しました。
またご本人様が不安を感じられている移動に関しては、通常タオルで抱えての移動が多いのですが、担架を使用しての移動に変更。入浴は怖いものではなくリラックスできる時間だと感じていただくべく、常にビクター様のペースや思いに合わせて入浴を実施いたしました。

お客様から選ばれるセンターに

これらの結果、笑顔が少しずつ増え、スタッフとの英語での会話を楽しんでくださり、「Great!」「Good!」など喜びの言葉をいただけるようになりました。また英会話の講師であったビクター様よりスタッフへの英会話のご指導もいただけるようになりました。
身体の痛みやコリが楽になり、移動への不安を訴えることもなくなりました。
奥様のご負担については、身体を拭く介助の負担がなくなり、ビクター様の嬉しそうな笑顔を見ることやスタッフに相談できることにより精神的な不安も軽減されたようです。
さらにご本人様・奥様により、「英語でのコミュニケーションや入浴方法を工夫してもらい気にかけてもらえて嬉しい」「エルケアのスタッフのサービスは心がこもっている」「これからもエルケアにお願いしたい」とのご希望があり、同時にサービスを開始した他社の訪問入浴を断りエルケアのサービスのみに変更、利用回数を増やしていただけることになりました。
私たちのサービスに感動してくださり、選ばれるセンターになれたことは、私たちスタッフにとっても大変励みとなる出来事でした。ビクター様に安心・安全に入浴を楽しんでいただけるよう、今後もサービスの質の向上を追求していきたいと思っています。

考察:感動のサービスにゴールはない

私たちは今回の事例から、従来の方法や国籍に囚われず、お客様の文化と背景を理解する大切さ、お客様に寄り添うケアの重要性を再確認するとともに、「感動のサービスにゴールはない!」と改めて学ぶことができました。
エルケア株式会社訪問入浴サービスは、「ロングライフはこんなことまでしてくれるのか!」を追求し、「世界中をHappyに!世界中をSmileに!」をスローガンに掲げています。これからもお客様に選んでいただけるセンターであり続けるために邁進してまいります。

 

「ニューノーマル時代へ、新たな未来に喜びとハピネスを!」をテーマに開催した『第17回ロングライフ国際学会』。日本国内はもとより、インドネシア、中国、韓国 を含めた 200 件を超える事例の中から最終選考に残った7組の代表メンバーが発表を行いました。
『第17回ロングライフ国際学会』の動画は下記よりご覧いただけます。